なぜか頬を染めてマリーが迫ってきた、その時。
「へーい!そこの可愛いお嬢さん達!俺らと一緒に飲まなーい?」
お約束なのか、なんなのか、酔っ払い客に絡まれた。
「むうっ。マリーちゃんとリッちゃんに気安く話しかけないで欲しいの!」
「怒った顔もキュートじゃ~ん」
「女二人でなんてつまんないっしょ?俺達と楽しく飲もうよ、なぁ~!」
酔っ払いの腕がリーシャの方へと伸びてくる。
肩を掴まれそうになったリーシャが身構えた瞬間だった。
リーシャの隣にいたはずのマリーの姿がぐにゃりと変わった。
マリーだった人物から低い男性の声が響く。
「ちょっと待った。女二人じゃないんだよ」
驚いたリーシャが隣を見ると、そこにはニヒルに笑う背の高い青年、ラズの姿が。
「わかったら俺の女にちょっかい出すのやめてくんない?殺すよ?」
「ひぃい!!」
「し、失礼しました……!!」
ラズの威嚇に怖じ気づき、転がるように離れていく酔っ払い。
そんな中、リーシャはラズを凝視して固まった。
「……ラ、ズ?」
「よっ、リッちゃん」
いつも通り軽い挨拶をする目の前の青年に、リーシャはようやく我に返った。
「な、なんでラズが!?マリーちゃんは!?マリーちゃんはどこ!?」
「実は……マリーちゃんは俺でしたっ」
(なっ……!?)
絶句である。
リーシャは呆然としつつ今までの数時間を振り返った。


