慣れた様子でマリーが店員を呼ぶ。
リーシャはマリーが注文する様子を黙って眺めながら、ふと思った。
「マリーちゃんて、よくこのお店に来るの?」
「ふえ?」
「外食するって話、聞いたことなかったから。このレストランのことも、今まで話題に出なかったし」
「さ、最近見つけたのよ!外食はたまにだけどするわ!」
「ふーん……」
「それよりリッちゃん、後でデザートも頼みましょうね!オススメは、季節の果物を使ったケーキなの!」
その後リーシャはマリーの「とっても美味しい」発言が大袈裟ではないことを自分の舌でもって大いに実感した。
リーシャの「美味しい!」の連発にマリーも満足そうである。
予定通りデザートも注文し、満腹と言いつつもリーシャはそれを別腹でペロリと平らげた。
さて。
楽しい食事の時間も終わり、レストランを出てすっかり暗くなった道を歩いていると、唐突にマリーがこう言った。
「ねえ、リッちゃん。もう一軒、寄ってかない?」
「え?これから?どこに?」
「お酒が飲めるところよ!」
という訳で、マリーに連れられてリーシャは滅多に訪れないバーへと足を運んだ。
こちらの店にも慣れているのか、マリーは特にまごつく様子もなくカウンター席にリーシャを伴う。
「マスター!いつもの……じゃなかった、えーと……リンゴ酒!わたしと彼女の分ね」
いつもの、と言いかけたマリー。
常連なのだろうか。
(あまりお酒をグイグイ飲むイメージはなかったのだけど……)
人は見かけによらないものだ。
「リッちゃん、勝手に頼んじゃったけど良かったかしら?」
「え、あ……うん。マリーちゃんに任せる」
「リッちゃんはあんまりお酒飲まないわよね?嫌い?」
「いや……そういう、わけでは。あんまり詳しくないというか……」
「なら、マリーちゃんが色々教えてあげよっか?」


