自爆しないで旦那様!


怖い、だなんて一度も考え付かなかった。

一緒に住んでいるオーチェにも、ペットとして未だ一緒にいるラズにすら「兵器だから怖い」と存在そのものに対して恐怖したことはない。

「……別に、怖くないけど」

「なっ……!」

嘘偽りない答えを返すと、エミリオは大きく目を見開いた。

「そ、それは貴女が、僕が実際どれ程の破壊力を秘めているか知らないからです……!だからっ……」

「だから、何?だからエミリオには、近づいちゃいけないの?」

「うっ……そういう、わけでは……」

「なら別にいいよね」

エミリオは否定しなかった。

それをいいことに、リーシャは隣に並んで会話を続ける。

「エミリオはここで何をしていたの?」

「僕は……湖を眺めに来たんです」

諦めた様子でエミリオがゆっくり喋り出す。

「湖が好きなの?」

「湖……というより、自然が好きです。草木や花、空に大地。そこに生きる生物も、好きです。それらは……彼らは……とても美しいでしょう?それをたまに、一人で眺めに来るんです」

人工的でないものをエミリオは好んだ。

自然のものは美しい。

己とは正反対のものに彼は強く憧れる。

「貴女は何をしに、こちらへ?散歩ですか?」

「実は、動物会話の練習をしていて」

「なるほど。この公園には生き物がたくさんいますからね。練習するには丁度いいかもしれません」

「エミリオに教えてもらったから、ちゃんとできるようになってきたよ!ありがとね」

笑顔で感謝され、エミリオは照れた。

真っ直ぐな笑顔を向けられることに慣れていないため、どんな表情をすればいいのかわからず戸惑ってしまう。

「それは……良かったです」

それだけなんとか絞り出すように言ってから、エミリオは小さな声で付け足した。

「また、何か困ったことが……あったなら……僕で良ければ、相談に乗りますよ」

「いいの!?ありがとう!」

「その、仕方なく、ですからね。……来るなと言っても、貴女は僕に近寄って来そうですし」

真っ赤になってもにょもにょと言い訳がましいことを口にするエミリオ。

そんな彼を見て可愛いと思いながらリーシャはクスリと笑みをこぼした。