***
さて、昨日あれだけの騒ぎがあったにもかかわらず、大学は休みになるどころか何事もなかったかのように通常授業である。
(本当……いつも通り、だよね)
廊下の窓から外を見る。
巨大な蛇に踏み荒らされた場所も綺麗に直っているようだ。
(教授達が魔術で元通りにしたのかな?)
流石プロの魔術師が集まる大学である。
対応が早い。
ガヤガヤとお喋りをする生徒達の間を通り、リーシャは次の時間の教室へと向かった。
ガチャリと扉を開け、その教室に入る。
するとエミリオの姿があり、彼とバッチリ目が合った。
「エミリオ……!」
「あ……」
昨日、気分を害して出て行ってしまってから初めての対面である。
エミリオも昨日のことを思い出したのか、気まずそうにリーシャから視線をそらした。
そのまま、彼女の横を通りすぎようとする。
「待って!」
「っ……!な、なんですか?僕に、何か?」
「えっと……」
訳もなく、リーシャはエミリオを呼び止めた。
強いて言うならば「無視されるのが嫌だった」のだ。
「エミリオもここの教室、使ってたんだね。知らなかった」
「……話はそれだけですか?」
「え……あ、うん」
「では失礼します。次も講義がありますので」
素っ気なく言うと、エミリオはさっさと教室から出て行った。
まるでリーシャから逃げるように。
(なんだろう……私、嫌われた?)


