自爆しないで旦那様!



***

 翌朝、いつもと変わらないリーシャの日常が始まった。

気持ち良く眠るリーシャの頬をペシペシと叩くエリマキトカゲ。

リーシャの耳にラズの声が響く。

「リッちゃーん、お~き~ろ~!!遅刻すんぞ~!」

「ん……ラ、ズ?」

「イェーイ!よっ!リッちゃん、おはよ!」

朝からテンションが高い。

だからこそ目覚ましには丁度いいのだが。

「……ちょっと、ラズ」

リーシャはむくりとベッドから体を起こしてペット姿のラズを睨んだ。

「貴方……昨日、私が言ったこと忘れたの?」

「はて、なんのことやら?」

「言ったでしょ。私の部屋に入るの禁止って」

「そんな!あれはリッちゃんなりのお茶目なジョークでは!?」

「違うから。わかったなら着替えるから出て行って」

「しくしく。リッちゃんが冷たい」

「嘘泣きしてもダメだからね」

「チッ、バレちまったか。てか今日も大学行くの?」

「行くよ。当たり前じゃない」

「そっか。頑張れよ、学生さん」

それだけ言うと、ラズは窓からひょいと出て行った。

それから身支度を済ませ階下へ向かう。

するとキッチンでは当たり前の如くオーチェが朝食を用意して待っていた。

「おはよう、オーチェ」

「おはよう。もうできてるよ。パンにベーコンに卵。サラダもね」

オーチェがリーシャの前に美味しそうな料理を並べていく。

オーチェは料理が上手だ。

なので基本的にリーシャはどんなものもオーチェが作ったものなら良く食べる。

だがしかし。

「……サラダのお豆……いらない」

これは無理。許せない。

料理の上手い下手関係ない。

以前からリーシャがそう言っているのに、こればかりはオーチェも譲らない。

「栄養あるから、食べなきゃダメだよ」

「その言い方。オーチェってママみたい」

「君の母親のつもりはないけど、まあ似たような心配はするさ。ところでリーシャ、今日の夕食は何が食べたい?リクエストがあるなら言って欲しいな」

「じゃあ……シチューで」

「シチューか。材料あったかな」

サラダの中に転がるお豆達とにらめっこするリーシャ。

オーチェが冷蔵庫の中身を確認しに席を立った時、こっそりオーチェの皿に自分の分をいくつか移動させたのはリーシャだけの秘密だ。