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翌朝、いつもと変わらないリーシャの日常が始まった。
気持ち良く眠るリーシャの頬をペシペシと叩くエリマキトカゲ。
リーシャの耳にラズの声が響く。
「リッちゃーん、お~き~ろ~!!遅刻すんぞ~!」
「ん……ラ、ズ?」
「イェーイ!よっ!リッちゃん、おはよ!」
朝からテンションが高い。
だからこそ目覚ましには丁度いいのだが。
「……ちょっと、ラズ」
リーシャはむくりとベッドから体を起こしてペット姿のラズを睨んだ。
「貴方……昨日、私が言ったこと忘れたの?」
「はて、なんのことやら?」
「言ったでしょ。私の部屋に入るの禁止って」
「そんな!あれはリッちゃんなりのお茶目なジョークでは!?」
「違うから。わかったなら着替えるから出て行って」
「しくしく。リッちゃんが冷たい」
「嘘泣きしてもダメだからね」
「チッ、バレちまったか。てか今日も大学行くの?」
「行くよ。当たり前じゃない」
「そっか。頑張れよ、学生さん」
それだけ言うと、ラズは窓からひょいと出て行った。
それから身支度を済ませ階下へ向かう。
するとキッチンでは当たり前の如くオーチェが朝食を用意して待っていた。
「おはよう、オーチェ」
「おはよう。もうできてるよ。パンにベーコンに卵。サラダもね」
オーチェがリーシャの前に美味しそうな料理を並べていく。
オーチェは料理が上手だ。
なので基本的にリーシャはどんなものもオーチェが作ったものなら良く食べる。
だがしかし。
「……サラダのお豆……いらない」
これは無理。許せない。
料理の上手い下手関係ない。
以前からリーシャがそう言っているのに、こればかりはオーチェも譲らない。
「栄養あるから、食べなきゃダメだよ」
「その言い方。オーチェってママみたい」
「君の母親のつもりはないけど、まあ似たような心配はするさ。ところでリーシャ、今日の夕食は何が食べたい?リクエストがあるなら言って欲しいな」
「じゃあ……シチューで」
「シチューか。材料あったかな」
サラダの中に転がるお豆達とにらめっこするリーシャ。
オーチェが冷蔵庫の中身を確認しに席を立った時、こっそりオーチェの皿に自分の分をいくつか移動させたのはリーシャだけの秘密だ。


