マリーは一瞬キョトンとしてから、へなへなと脱力する。
「……よ、良かっ、たぁ……」
マリーの目から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「良かった、わ…………お友達って、言ってくれた、リッちゃんのこと……傷つけて、なくて……ホントに、良かった……!」
頬を濡らしたまま、マリーがリーシャにギュッと抱き着く。
「リッちゃん!!マリーちゃんのこと嫌わないで!もっともっと、お友達として、頑張るから……!ちゃんと、頑張るからぁ……!」
――僕らの本質は、“兵器”なんだよ
――心があろうと、兵器として見られていました。完全に人として扱われてはいませんでしたね
――檻の中にいる猛獣って感じだったんだろうな、俺達は
ついさっき聞いたばかりの話を思い出して、マリーの震える体を抱き締めて。
リーシャの目から言葉にならない涙が溢れる。
(いったい、どんな思いで、みんなは生きてきたんだろう……。私には想像することもできないような思いが、きっと沢山……たくさんあるんだと思う)
リーシャはマリーの背中をそっと撫でた。
「マリーちゃん。マリーちゃんが必死に頑張らなくても、私はマリーちゃんのこと、ずっと友達だと思ってるよ」
「っ……!」
「怖がらなくて、いいからね」
「……うぅっ……リッちゃん……うわぁああん!!!!」
恥じらいなどなくマリーが大声を上げて泣き出す。
人工魔術生命体として造られた存在は、一般的に心がなく「人間」とは違うと言われている。
しかし、絶対に「兵器」として生み出すのは間違っている。
リーシャはそう確信した。
(だって、こうして、心が生まれるかもしれないんだから)
それを人は奇跡と呼ぶのだろう。


