「はぁ……来週までにはできるようにならないと、教授になんて言われるか……」
どんよりしながら廊下を歩く。
休憩時間になったのでリーシャはお弁当を持って大学の中庭へ向かった。
天気がいい日は中庭のベンチで食べるのがリーシャのお決まりだ。
そしてそこには大抵「中庭お弁当仲間」がいる。
「リッちゃ~ん!!」
いつものベンチに座り、リーシャに向かって元気良く手を振るストロベリーブロンドが可愛い女の子。
リーシャは笑顔で彼女に駆け寄った。
「こんにちは、マリーちゃん」
「待ってたわ!一緒に食べるのよ!」
中庭お弁当仲間でありリーシャの友達であるマリー。
互いの学部は異なるが、たまたま昼食を食べる場所が同じで二人は仲良くなった。
マリーはちょっと変わり者だが、いつも元気で明るい。
そしてイイ子だ。
そんな彼女の隣にリーシャも腰掛ける。
「リッちゃん、空き時間だったのよね?また課題やってたの?できるようになった?」
「うぅ……まだです」
「そうなのね……。マリーちゃんが何かお手伝いできれば良いんだけど……口語魔術はぜーんぜんわかんないしなぁ……」
サンドイッチをパクリと食べながら難しい顔をするマリー。
うんうん唸っていたかと思うと、彼女は突然キラリと瞳を輝かせた。
「そうだ!良いこと思いついたの!マリーちゃんの知り合いに言語魔術が得意な男の子がいるから、紹介してあげる!」
「え、誰だろう?私、知ってるかな?」
「うーんとね。口語魔術学科じゃなくて、古文書解読学科の子なんだけどね」
古文書解読学科。通称「本の虫学科」。
古い魔術書の言葉を解読し、わかりやすいように記したり、解釈の研究をしたりするので本とにらめっこするのが基本。
だからだろうか。
リーシャからすると「真面目な人が多い」という印象だ。
「食べ終わったら会いに行きましょう!今日も来てるはずなの!」
という訳で昼食後、その男の子と会うことになったリーシャだった。


