傷ついた表情で過去を語るエミリオ。
その隣でラズが苦笑する。
触れてはいけない話題だったかと後悔し、リーシャはオーチェに疑問を投げた。
「そう言えば、どうしてオーチェは私の家にいたの?」
「リーシャが生まれるより、八十年くらい前かな?その頃、大魔術師だったマーコル・バルケが僕らを兵器の役目から解放してくれてね。それで僕はリデア家にお邪魔することになったのさ。それまではずっと軍の研究所にいて、僕らに自由はなかったよ」
「そうですね。突然自由に生きろと言われて、逆に戸惑ったのを覚えています。僕は魔術に興味があったので、すぐアルブの大学に入りました」
「エミリオくんは勉強大好きだよね。いい加減、飽きたりしない?」
「しませんね。魔術は奥が深いですから。学べば学ぶほど、知識や謎が増えるんです」
「何度も入学しては卒業してるらしいじゃん?若いままなのがバレて変に思われなきゃいいけど」
「ラズが心配することではないでしょう。僕の問題です」
「そりゃそうだ」
人工魔術生命体は造られたままの姿であり続け、年をとらない。
オーチェ達は五百年前からずっと今の姿のままである。
肉体的な寿命もなく、よって老衰もあり得ないのだ。
「ラズは?自由になってから、どうしてたの?」
「んー?俺?俺は自立した大人だぜ?誰にも頼らず好きに生きてきたに決まってるじゃん?それこそ、エリマキトカゲになってみたり、な?」
ニヤリと笑むラズを見て、エミリオがハァと息を吐く。
「なにもトカゲにならずとも……ラズが一番、人間に溶け込みやすくできているでしょう。羨ましいです」
「そういう性能って疲れそうで、僕は嫌だな」
「性能?」
オーチェのこぼした単語を拾うリーシャ。
首を傾げる彼女にオーチェは詳しい説明を始めた。


