リーシャはオーチェ、エミリオ、ラズの顔を順番に視界に入れた。
情報量が多すぎて、どこから突っ込めばいいのかわからない。
「えっと……。つまり、オーチェ達は人工魔術生命体で、生まれたのは五百年前ってこと?」
「うん。そうだよ。僕らは五百年前に生まれた。大魔術師ドラゴシュ・リデアが生み出したアンティークさ」
オーチェがにこやかに答える。
「ドラゴシュ・リデアって……もしかしなくても」
「わかるよね?リーシャ。君の遠いご先祖様の名前だよ」
やっぱりか。
祖父から聞いたことがある名を耳にしてリーシャはまさかと思ったが、当たりらしい。
「人工魔術生命体の研究のことは、私も聞いたことあるの。ドラゴシュっていうご先祖様以外、心を宿した生命体を生み出した魔術師は未だにいないって、前におじいちゃんが言ってた」
だがその「心を宿した生命体」が誰なのか、そこまでリーシャは祖父から聞いていなかった。
祖父が知っているのかどうかもわからない。
「フフッ、皮肉だよね。兵器として量産した生命体には心が宿り、戦争のない時代に“人間”として造ろうとしたものには空っぽの命しか宿らないなんてさ」
「オーチェ達は……戦争に参加したのよね?」
これにはすかさずラズが答えた。
「したよ。何人も殺した」
淡々と事実を述べるラズの顔に笑みはない。
「っ……嫌だって、言えなかったの?」
「戦うことが僕達の役目でしたから。生まれてすぐ人殺しの技術ばかり叩き込まれたあげく、魔術師達からの命令には絶対服従。心があろうと、兵器として見られていました。完全に人として扱われてはいませんでしたね」
「そうそう。檻の中にいる猛獣って感じだったんだろうな、俺達は」


