自爆しないで旦那様!



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 それから動揺するリーシャを落ち着かせるため、オーチェが全員のお茶をいれ直してくれた。

ほとんど会話がないまま、リーシャ達はティーカップに口をつける。

そんな中、唐突にラズがこう言った。

「ごめんな、リッちゃん。愛くるしいペットだと思ってたエリマキトカゲが実はデカい男で、しかも人工魔術生命体だった上に正体は兵器だなんて、冗談キツイよな……」

解せないラズの発言にリーシャは首を傾げる。

「……愛くるしい、ペット?」

「あれ?反応するとこそこ?」

そんな会話はさておき、オーチェは苦笑してリーシャに視線を遣った。

「どうしよう。改まると僕らのこと、何から話せば良いのかわからなくなるね」

「始まりからで良いんじゃないですか?僕達が生まれたきっかけから……」

エミリオに促され、オーチェが小さく頷く。

「そうだね……。なら五百年前か。リーシャ、この国の歴史は知ってる?五百年前、西にある大帝国ランセバルトがこの地を攻め落とそうとして、たくさん兵士がやって来たんだ」

「ええ。授業で習ったから、知ってる」

昔から、この国が西の大帝国と何度も戦争を繰り返していた、という事実は歴史の授業で習う。

誰もが知っていることだ。

今は平和で、百年ほど他国との争いは行われていない。

「五百年前、この地で暮らしていた魔術師達はランセバルト軍と戦うため、人工魔術生命体で人間の姿をした兵器を数多く生み出した。心も自我もない兵士の姿をした生命体を魔術で操って人間の代わりに戦わせた方が、楽だし安全だったからね」

リーシャを真っ直ぐ見つめ、オーチェは続ける。

「だけど、大魔術師ドラゴシュ・リデアが生み出した人工魔術生命体だけは違った。彼が生み出した生命体は、生まれながらに心も自我も持っていたんだ。そして、心があるまま戦闘に参加させられた。それが僕らだよ」