「二人とも!やめてください!!」
「エミリオくん、うるさいから引っ込んでて」
リーシャが聞いたことのない冷たい声でラズがエミリオを邪魔扱いする。
いつものラズと雰囲気が全く異なり、リーシャは戸惑った。
しかしそれもほんの僅かのこと。
次のエミリオの発言で全てが崩れた。
「やめないと言うならば、今この場で自爆します!!リーシャを巻き込んで!!」
ピタリと二人の動きが止まる。
ピリピリした空気が一瞬にして消え去った。
ラズがエミリオを見て苦笑する。
「エミリオくん、それはマジ勘弁……」
「なら貴方達もやめてください。僕にリーシャを殺されたくないでしょう?」
オーチェがスッとナイフを下ろす。
取り敢えず、ケンカは止められたようだ。
しかし気になることがある。
リーシャはそっとエミリオに尋ねた。
「エミリオ……なんなの?自爆って」
エミリオは申し訳なさそうな表情で言葉を探す。
「すみません、リーシャ。僕は……いえ、僕達は……」
言い淀むエミリオ。
見兼ねたのか、オーチェが溜息をついてからリーシャに問い掛けた。
「リーシャ、人工魔術生命体という言葉を知っている?」
「ええ。人間が魔術でつくった生命体のことよね」
大昔から、人間は魔術によって命を生み出すことに情熱を注いできた。
その研究で人工的に造られた命を「人工魔術生命体」と呼ぶ。
「そうだよ。ここにいる僕やラズ、エミリオ、マリーがそう」
「えっ……?みんなが、人工魔術生命体……ということ?」
嘘でしょ?という思いで聞き返したリーシャだが、オーチェはハッキリと頷いた。
「うん。しかも僕らは、“普通の人間”をモデルに造られたわけじゃないんだ。僕らの本質は、“兵器”なんだよ」


