「ヤバい!」
ラズがポケットから顔を出し、小声で呟いた。
直ぐ様オーチェがマリーに呼び掛ける。
「落ち着きなよマリー!殺すのは人間じゃない!蛇だ!」
「蛇?蛇を殺せばいいのね?わかったわ」
そう言うと、マリーは楽しげに周囲の蛇をナイフで切り刻んでいった。
その行為は問答無用であり、容赦ない。
「……どうすんの?あれ」
呆れたようにラズが尋ねる。
返事をしたのはオーチェだった。
「ヤバくなったら僕が止める。だから君達はリーシャを連れて安全なところへ避難して」
それが最善なのか、エミリオが大きく頷いた。
「わかりました。行きましょう、リーシャ」
「ええ。でも、マリーちゃんは……大丈夫なの?」
「彼女のことは心配いりません。ああなっては、もうどうしようもないですし」
「増えてきた。急いで!」
早く行けと、オーチェが叫ぶ。
こうしてリーシャとエミリオとラズは学外に避難しようと、大学の門に向かって駆け出した。
見れば、他の生徒達も慌てふためきながら門を目指して走っている。
(マリーちゃん、大丈夫かな……?心配だけど、今はオーチェに任せるしかないか……)
一緒にいても足手まといなだけだ。
ならば安全な場所に逃げることがリーシャにとってのベストな行動である。
そう思いながら走っていた時だった。
唐突にズンと重たい地響きのような音がしたかと思うと、巨大な影がリーシャ達の頭上を覆った。
恐る恐る前方を見上げる。
するとそこには、中庭に植えられた木々よりも大きくて長さがある巨大な蛇がいた。
その蛇は鎌首をもたげてリーシャ達を悠然と見下ろしている。


