走っていたら前からも蛇が現れた。
引き返そうにも、背後にも違う蛇の群れが迫る。
「挟まれましたか……!」
エミリオが苦々しげに唇を噛んだ。
どうしようとまごついているリーシャ達目掛けて、蛇は容赦なく襲い掛かってくる。
リーシャの足元にも牙を剥いた蛇が迫った。
(噛まれる!?)
そう思って怯んだ、次の瞬間。
「僕のリーシャに噛み付こうだなんて、許さない」
ズバッと蛇が真っ二つに切り裂かれた。
リーシャの足元にいた蛇から血が飛び散る。
やったのはなんと、オーチェだった。
「オーチェ!?どうしてここに!?」
「君を護ることが僕のお役目だからね。ピンチには駆けつけるさ」
ナイフを握ったままサラリと告げる。
笑顔なのだが行動と相まって少し恐ろしく感じてしまうリーシャだった。
とその時、殺された蛇の亡骸を凝視して、マリーがぶつぶつ言い始めた。
「……血。真っ赤な、血」
何だか様子がおかしい。
どうしたのだろうか。
気づいたリーシャは、マリーに声を掛けようとした。
しかし。
「ふふ、ふふふ。あははははは!!血だ!血だわ!殺すのね!そうなのね!」
「ま、マリー、ちゃん……?」
いきなり狂ったように笑い出し、楽しげに「殺す」と発したマリーは、普段とは別人だった。
少なくともリーシャはこんな彼女を知らない。
彼女の青い瞳は血を目にしたせいか、真っ赤に染まっていた。
そして、どこからともなくナイフを取り出したマリーがその切っ先をリーシャ達に向ける。


