自爆しないで旦那様!



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 この日、リーシャはたまたまラズをポケットに入れていた。

朝の食卓でオーチェと死闘を繰り広げてヒィヒィ言っていたので、そのままポケットに突っ込んで大学まで持ってきてしまったのだ。

あのまま放置していたらラズは絶対とどめを刺されていただろう。

「今朝はマジでありがとな、リッちゃん」

「いえいえ。可愛いペットのピンチだったからね。あのくらいはするよ」

「ほう。とうとう俺をペットと認めたか。これは自称じゃなくなる日も近いか?」

そんな会話をしつつ中庭へ向かう。

もうお昼の時間なので、いつもの場所でマリーが待っているはずだ。

リーシャの予想通り、向かった先には元気なマリーの姿があった。

「リッちゃーん!こっちこっち、なの!」

手を振るマリーを視界に入れると、その横に珍しい人物を発見。

ラズも気づいたらしく、リーシャの服のポケットから顔を出してボソッとこう言った。

「あれ?エミリオくんがいる」

「今日はエミりんも誘ったのよ!」

「ご一緒してもよろしいですか?」

ニコニコしているマリーの隣で少し恥ずかしげに許可を待つエミリオ。

リーシャはすぐに笑顔で答えた。

「もちろん!」

「ありがとうございます」

ホッとした様子でエミリオも微笑む。

すると、いきなりラズがピョンとエミリオの服へ飛びついた。

そして馴れ馴れしく話しかける。

「よ!久しぶり、エミリオくん」

「貴方は……どなたです?」

「俺だよ俺。忘れちまったのかよ俺のこと」

「……エリマキトカゲからの、オレオレ詐欺ですか」

「ちげーよ!詐欺なわけあるか!俺だっての!ラ、ズ!」

「え?貴方、ラズなんですか?」

「ハゲたとか言うなよ?」

「ハゲるも何も、どうしてエリマキトカゲなんかに……」