自爆しないで旦那様!


なぜかラズがパイを頬張りながらリーシャとオーチェを威嚇してきた。

エリマキトカゲのエリマキがバッと広がる。

「うるさいよトカゲ。だいたい、マリーが来なければ二人だけのお茶会になるはずだったのに」

「リッちゃんを独り占めは良くないと思うのよ!だいたいチェるチェるはどうしてリッちゃんと一緒にいるの?まさか……リッちゃんの旦那様に!?」

「いや違うから」

ラズが間を置かずに否定した。

リーシャが口を挟む隙もない。

「ならお仕事なの?でもチェるチェるの性能はさーー」

「怒りのマジギレラズキック二回目!!」

「ふふん!マリーちゃんを甘くみないで欲しいの!二回も同じ攻撃は食らわないのよ!」

マリーは先程とは打って変わって完璧にラズのキックを避けて見せた。

リーシャは食べながら茶番のようなそれを眺める。

こうして見ていると、マリーとラズはかなり親しいようだ。

(友達……なのかな?)

ならばどこで知り合ったのだろう。

リーシャは興味本位で尋ねてみることにした。

「マリーちゃんとラズって仲良さそうだけど、どうして?どこで知り合ったの?」

「うっ……」

なぜかラズが固まる。

その隣でマリーがニコニコしながら答えてくれた。

「えっとね、初めましての場所は魔術の研究所なの」

「アルブの?」

「そうよ!」

(ラズったら、いつの間に大学までお散歩しに行ってたの……?)

アルブの魔術研究所といえばリーシャが通う大学の研究所以外にないだろう。

これは釘を刺しておかねばなるまい。

そう考えてリーシャはラズに注意した。

「ラズ、気をつけてね。大学内は大学が飼育してない動物は入っちゃダメなんだよ。たぶん爬虫類もダメだと思う」

「ああ……うん。気をつけるわ……モグモグ」

何だかラズにしては歯切れが悪い。

お喋りなはずのエリマキトカゲはアップルパイにかぶり付いてそれ以上何も話さなかった。