これにはいち早くマリーが手を挙げた。
「食べるの!」
それを冷めた目で見返すオーチェ。
「君には聞いてないんだけど」
「食べる!」
「トカゲにも聞いてないから」
ラズの主張も無視され、オーチェがリーシャを見つめる。
「みんなで食べたいな」
そうリーシャが言えばオーチェはハァと溜息をついた。
自分がどれだけリーシャに甘いか知っているので自己嫌悪である。
「……わかった。用意するから、キッチンに来て」
そのままパタンと扉を閉めてオーチェは出ていった。
「やったぁ!ありがとうなの、リッちゃん!」
「さすがリッちゃん。オーチェくんの扱い方よくわかってるね~」
「そんなこともないけど……」
オーチェがいなくなってから喜びの声を上げる一人と一匹。
とにかく、みんなで食べられることになったので良しとしよう。
そう思いながらリーシャはキッチンへと移動する。
キッチンではアップルパイを切り分けたオーチェが紅茶を準備して待っていた。
早速いただき、それぞれが「美味しい」と賛辞の声を漏らす。
「ん~!チェるチェるの手作りアップルパイ、最高なの!!」
「う~ま~い~!」
「君達、おまけの分際でうるさいんだけど。黙って食べなよ」
おまけ達を横目に睨んでからオーチェが笑顔でリーシャに向き直る。
「リーシャ、どう?」
「美味しいよ。ありがとね、オーチェ」
「ふふ、良かった。君に喜んでもらいたくて焼いたんだからね」
「そこ!ゲロ甘な雰囲気つくらない!甘いのはパイだけで十分だっての!」


