「わかりました。明日からそうしましょう。ですが、そうなると少し朝食の時間が遅くなってしまいますが、問題ありませんか?」
「大丈夫だよ。一緒に起きて一緒に作ろう?」
この提案にエミリオは顔をしかめた。
「一緒に?貴女がキッチンに立つと僕が不安になるのですが」
「もう!だいぶ料理は上達したってば!」
「そうではなく、寝起きでボーッとしている無防備な貴女が包丁で指を切ったり、鍋で火傷したりしないか心配になります」
「そんなにボーッとしてないもん」
「してますよ。ほら」
一瞬のことだった。
チュッと軽い音を立てて、リーシャの唇にキスが落とされる。
予想外のことに驚き、リーシャは目をパチクリさせて固まった。
「わかりましたか?こんなに無防備だから簡単に唇を奪われるんです。このままだと外出させるのも不安になります」
「っ……!ふ、不意打ちは卑怯よ……!」
「男は卑怯な手を使って意中の女性を口説くものです。今のは僕だからいいですが、外ではくれぐれも気をつけてください」
「好き」を伝える手段として、リーシャはエミリオから一日に何度もキスをされる。
しかしそのタイミングはまちまちで、今みたいにリーシャの心の準備ができていない時も多い。
(もうっ!エミリオがこんなキス魔になるなんて思わなかった!)
リーシャ限定ではあるが、ところ構わずなエミリオである。
出会った頃の距離感がもっとずっと遠かったため、こんなになるとは思わなかった。
(まあ……嫌では、ないけれど)
リーシャだって、キスは好き。
照れながらこっそりエミリオを見つめ、リーシャは初めて彼と出会った懐かしい過去を思い出した。


