驚いてリーシャは息を呑む。
リーシャへの文句などではなく、彼自信の悩み事だった。
しかも「人間に見えているか?」という、ちょっと理解し難い悩み事だ。
今の彼の言葉を聞いていると、まるで「エミリオ」が人間ではないみたいに聞こえてしまい、リーシャは戸惑った。
(人間らしくって、どういうこと……?誰かに人間らしくないって言われたの……?)
あまりにも冷酷な人間は「悪魔!」と罵られたりもするが、なんだかんだと課題に付き合おうとしてくれる彼がそこまで冷たい人間だとは思えない。
(もしや、人付き合いが苦手で、心にもないことを周りに言ってしまって、同じ学科の人達からハブられているんじゃ……!)
そんな考えに至ったリーシャはエミリオにどうにか元気を出してもらおうと、舌を出して彼の頬をそっと舐めた。
犬の姿だからか、恥も何もなく自然とそれができてしまった。
「クゥーン(落ち込まないで。悩んでる時点で貴方はちゃんと人間だよ。心ない人は周りや自分のことを考えて悩むことすらしないもの)」
何をどれだけ言ったところで魔術を通していない単なる犬語では伝わらない。
わかってはいるものの、リーシャは言わずにはいられなかった。
犬のまま、リーシャがジッと彼の瞳を見上げていると。
「……ふふ。君、もしかして慰めようとしてくれているんですか?」
柔らかく微笑みながら、エミリオにそっと頭を撫でられる。


