自爆しないで旦那様!


「リーシャ。昨夜、少し考えていたことがあるんですが、聞いてくれますか」

「……なに?」

やっと唇が離れてリーシャがちょっと落ち着いた頃、エミリオは真剣な表情でこう言った。

「今まで僕は、ただ自分の知識欲や興味のために大学で魔術を学んできました。多くの知識や技術を身につけるだけ身につけて、結局自分は何がしたいのだろうと……ずっとわからないまま生きてきたんです」

軍から解放されて得た自由に、どんな未来を描くのか。

それはあまりに唐突で、今まで歩んできた道に一人で立ったままでは答えなど見つからなくて当然だった。

「ですが貴女と出会って、好きになって、貴女と一緒にいる未来を想像した時、形がなかったそれが、やっとハッキリ見えた気がしました」

少し緊張した面持ちで、彼は語る。

「僕は大学を卒業したらアルブの研究所で、自分の体について研究します。僕が、死ねる体になれるように」

自爆型のみの特性である「再生する体」。

それを普通の人間に近づけたいと、エミリオは願っている。

「僕は本当の人間になって、貴女と一緒に年をとりたいんです。それが、今の僕の夢です」

言ってから、エミリオは恐る恐るリーシャの顔色をうかがった。

「貴女は、どう思いますか……?僕が自分の体について研究することを、無駄だと……反対、しますか?」

「どうして私が反対すると思うの?」

不思議に思って尋ねると、エミリオはばつが悪そうな顔をした。

「貴女は、僕が死ぬことを嫌うから」

「それは自爆の話でしょ?いつか死ぬのが人間なんだから、その当たり前を求めるエミリオに反対なんてしないよ。私は貴方を、人間だと思ってるから」

人間とは違う。

そんなこと、エミリオ自身が一番よくわかっているはずだ。

リーシャも、エミリオの「核」を目にした時にそれを強く感じた。

けれどリーシャはエミリオと一緒にいるようになって、彼が「兵器」ではなく「人間」であろうと努力していることも知った。

だからこそ、そうして頑張るエミリオの「心」を否定したくはない。

言葉を付け足さずとも、リーシャの気持ちはエミリオに伝わったようだ。

彼は泣きそうな顔で微笑んだ。

「ありがとうございます、リーシャ。大好きです」