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翌朝、寝ていたリーシャはアルブの小さな家ではなく、ラウジジュにある実家で目を覚ました。
今日が週末で大学が休みだったため、実家にお泊りとなったのだ。
もちろん、エミリオやマリーも一緒である。
「まさか、こんな風に初めてリーシャの実家に泊まることになるなんて思いもしませんでした」
朝食を食べ終わってから、リーシャは散歩に誘われた。
エミリオと二人、小さな花が咲く庭先をゆっくりと歩く。
「リーシャ、今度の休みの日、僕の家に遊びに来てくれませんか?」
「うん、行きたい。昨日、初めてエミリオの家に行ったけど、ゆっくりできる状態じゃなかったしね」
「そうですね。今度は一緒に食事をしましょう。僕が作りますよ。それから……」
エミリオはリーシャの耳元でそっと囁いた。
「泊まっていってくれても構いません」
「っ……!!」
エミリオの家にお泊り。
それは今回みたいに、家族や友達が一緒に寝起きする状況ではない。
小さな家で、彼と朝まで二人きり、ということだ。
「こんな、下心がある僕は嫌ですか?」
甘い声が耳をくすぐる。
リーシャの頬は一瞬にして熱を持った。
「は、恥ずかしいこと、言わないで……!」
「なら紳士的にいきましょう」
そう言うとエミリオは、リーシャを後ろからギュッと抱き締める。
「泊まっていただけるなら、貴女が望むまで、僕は唇でしか貴女に触れません。それでよろしいですか?」
「ど、どの辺がよろしいの!?何一つよろしくないから!」
「ふふ、真っ赤ですよ。可愛いですね」
「なっ……!!」
顔を覗き込まれ、愛おしげに微笑まれる。
そのまま彼の唇が落ちてきて、リーシャは言い返すことができなくなった。
(こ、こんなところで、キスなんて……!)
玄関前である。
誰かに見られたら恥ずかしいことこの上ない。
誰も見ていないことを祈りながら、リーシャは甘やかな口づけを受け入れた。


