自爆しないで旦那様!



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この国には「大魔術師」という地位が存在する。

国の最高指導者である大魔術師は、国民が投票して国家魔術師の中から一人だけ選ぶのだ。

一度この地位に就いたら基本的に死ぬまで最高指導者の立場が約束されており、政治、経済、軍事、外交など、様々なことに自身の意見を押し通すことができる。

さて、そんな権力者である大魔術師は、その地位に就くと、首都アルブの中心地にある「大魔術師の館」という巨大な屋敷で暮らすことが決まっている。

ここは昼夜共に警備が厳しいことで有名だ。

国の重要人物である大魔術師を守護するために建てられた特別な館。

しかし、そんなネズミ一匹通さないはずの館のセキュリティ魔術を難無くかいくぐる者もいる。

ラズは慣れた様子で大魔術師のプライベートルームへするりと入り込んだ。

「どーも、こんばんは。俺の顔、覚えてる?」

深夜の招かれざる客とは鬱陶しいものである。

大魔術師ベッティル・ドルカは、いつ会っても軽薄そうにニヤニヤしている青年を睨みつけた。

「ふんっ、夜犬(やけん)か。今は貴様に依頼するような仕事はない。わかったら出て行け」

殺し屋としてのラズは「夜犬」と名乗って仕事をしている。

この大魔術師からも何度か仕事を頼まれて、犬のように忠実に真夜中に「掃除」をした経験があるラズだった。

「いやいや、今日は別件。俺があんたにちょっと確認したいことがあってさ、ベッティルくん」

「なんだ?」

「これ、見覚えなーい?」