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やって来た大学の中庭で、なぜかリーシャはエミリオの膝に乗っかっている。
動物好きなのだろうか。
彼は優しくリーシャの頭を撫でた。
「今日は天気がいいですね」
「ワン!(そうだね)」
「こんな晴れた日でも、僕はうつむいて読書をしようと思っていたのですが、君がいるのでやめておきます。どうぞ僕に構ってください。君はうるさくないですし、賢そうなので好きですよ」
「クゥン(っ……!)」
犬に向けての言葉だとわかってはいるものの、それでもやはり「好き」という言葉にリーシャはドキリとした。
「聞いてください。今日の夕方、僕はとある女性と会って彼女の課題にアドバイスをしないといけないんです」
おそらく自分のことだと察するリーシャ。
「好き」の余韻は一瞬にして消え去り、タラリと冷や汗をかく。
(どうしよう……私への愚痴でもこぼすのかな……?本当はすごくすごく迷惑だ!とか……)
「単に言葉を発して会話を繋げるのは簡単です。しかし、どのような態度でいれば正解なのか……僕はいまだによくわかっていないんです。もう生まれてかなり経つはずなのに……。僕はちゃんと、人間に見えているんでしょうか……?人間らしくあるには、どうしたら良いんでしょう」


