血塗れの服で食卓を囲むのはお断りだ。
リーシャはオーチェを厳しく睨むと、風呂場が空いていることを確かめてからマリーの着替えやタオルを用意した。
「んじゃあ、俺はメシいらないから」
「ラズ?」
マリーを風呂場に案内し終えたリーシャが廊下に出ると、ラズがそう言って外出するところだった。
リーシャの姿に気づいたラズが振り返る。
「ちょっと野暮用ができちまってな。出掛けてくる。おやすみリッちゃん。エミリオくんとイチャイチャしないで早く寝ろよー」
こうやって、ラズがふらりとどこかへ行ってしまうのはよくあること。
リーシャはさして気に留めず、出て行くラズの背中を見送った。
「ラズはどちらに?」
リビングのソファーに座っていたエミリオがリーシャの隣にやって来る。
二人はラズが消えた玄関の方を見た。
「野暮用だって」
「野暮用……」
何か考えている様子で腕を組むエミリオ。
そんな彼に聞きたいことがあり、リーシャは恐る恐る口を開いた。
「エミリオ……自爆は、してないよね?」
ラズのことを考えていたエミリオが、玄関からリーシャへと視線を移す。
「してませんよ」
「そっか……良かった……」
「した方が楽だとは思いましたが」
「ダメ!エミリオが楽でも私がツラいの」
「っ……貴女にツラい思いをさせるくらいなら、我慢します」
ギュッと胸の前で拳を握るエミリオ。
その時、いつの間にか後ろに立っていたルイが小さく笑った。
「フフッ、我慢か。エミリオからそんな言葉が聞けるなんてね。本当にリーシャのことが大好きらしい」
穏やかなルイの声にリーシャとエミリオが振り返る。
恋人の関係になったという二人を交互に見てから、ルイはちょっと思いついた。


