自爆しないで旦那様!


「脱出だけならもっと早くできたんだよ。けど、どうしてもこの研究所にあるリーシャに関するデータを消したくてね。上手く処理するのに時間が掛かったのさ」

「へー。リッちゃんのため、か」

「うん。あんなものが残ってるから狙われるんだ。なら消せばいい」

「そりゃそうだ。で、ちゃーんと消した?」

「消したよ。全て終わって、今はどうやって帰ろうか悩んでいたところ」

オーチェの話を聞きながらラズは死体を確認した。

転がっている中からバスティアンを探す。

「あー、たぶんこれかなバスティアンくん。顔が半分あれしちゃってるから分かりづらいけど」

ターゲットは既に死亡。

やることがなくなったラズは、何か役に立ちそうな情報がないかとバスティアンのデスクに移動した。

書類や資料などが置かれているそこを、隠密型の癖で物色し始める。

「ん?これは……」

ラズはとある書類に目を留めた。

「そう言えば、他の研究員は?殺った?」

オーチェが誰にともなく尋ねる。

ラズが反応しないので、転移魔術の準備を始めていたエミリオが答えた。

「僕達の姿を見た研究員と兵器は始末しました」

「なら、それで十分だね。ああ、でもマリーはもっと殺したそうな顔してる」

「ふぇ!?してないのよ!そんな怖い顔!」

「ハハッ、冗談だよ」

「うぅ……チェるチェるの冗談は心臓に悪いの!」

ぷるぷると震えるマリーをからかい、オーチェがエミリオの隣に立つ。

彼は嬉しそうに言った。

「でもエミリオが来てくれて助かったよ。魔術を使って楽に帰れるね」

「入る時は弾かれますが、研究所から出る分には無効化されませんからね。とは言え、僕は魔術を使い過ぎて疲れてるんですが」

「あとは帰るだけなのよエミりん!頑張って!」

マリーに応援されてエミリオが空間転移陣を描き終える。

それからエミリオは、一人だけ離れているラズを呼んだ。

「ラズ!帰りますよ」

デスクに置かれた書類を手に取り、真剣な表情でそれを読んでいるラズ。

エミリオの声に彼は顔を上げた。

「おっと、もう準備できちゃった?相変わらずエミリオくんは仕事が早いね〜」

「何か気になる情報でもありましたか?」

「ん〜。ちょっとね」

読んでいた書類をポケットに入れ、意味ありげな笑みを浮かべながらラズは仲間の方へと近寄った。