何やら機械を使ってマリーの情報を調べようとしている研究員達。
慌てふためく彼らに狙いを定め、マリーはナイフを握り直した。
「殺戮型、殺戮型って、うるさいのよ」
薄暗い室内に刃が閃く。
「私には、マリーって名前があるんだから!!」
一瞬にして三人の喉笛を切り裂いたマリーは、残りの研究員達にもナイフを向けた。
「軍の研究員なんて大っ嫌い!!昔も今も、誰も私のことを名前で呼んでくれない!!マリーちゃんがっ、マリーちゃんって、自分で呼ばなきゃ、誰も……!」
人として見てくれない。
人間として扱われない。
呼ばれない名前なんて、時と共に忘れ去られるだけ。
自分で呼び続けなければ、五百年の間にとっくに失われていただろう。
生みの親であるドラゴシュが付けてくれた、人として生きるために授けてくれた名前を。
「嫌い!嫌い嫌い!大嫌い!!殺してやる!!」
マリーの青い瞳が赤に染まる。
激情のままにマリーが他の研究員も殺そうとした時だった。
「おっと、そんなキレんなよマリーちゃん。そいつらに呼ばれなくたって、今はリッちゃんがマリーちゃんて呼んでくれるだろ?俺達だって、今はちゃんと名前で呼ぶようにしてるしな?」
最新型兵器を片付けたラズが、後ろからマリーを羽交い締めにする。
落ち着けと囁かれ、マリーは自分を取り戻すためにリーシャのことを考えた。
「リッ、ちゃん……?そう、ね……そうよ。リッちゃんが呼んでくれる。マリーちゃんって。ラズりんは……昔は全然お喋りしてくれなかったわ」
「まあ、無口な一匹狼だったもんで。というかマリーちゃんとは任務が全く違ってすれ違いばっかだったし。あれじゃ名前を呼ぶ隙もないっての」
ラズとマリーが会話に気を取られていたその時。
「うわぁ!?」
残りの研究員から悲鳴が上がる。
見ればエミリオが魔術を発動させて彼らを縛り上げていた。
「拘束しました」
「おっ、エミリオくん流石!できる男はモテるぞ〜」
「不特定多数から好かれたところで、リーシャに愛されなければ意味がありません」
「クッソ真面目に返答すんな!」


