***
一方その頃グレジウ要塞では、ラズの道案内で忍び込んだ三人がバスティアンの研究室を目指して地下の薄暗い廊下を駆けていた。
「慣れた場所とはいえ、厄介な研究所だよな。オーチェくん救出ミッションとかガチでやりづらいっての」
「転移魔術が弾かれますからね。位置がわかってもオーチェのところまで一瞬で移動できないのが面倒です」
「ラズりん!地下のどこなの!?マリーちゃんわからないから、片っ端からドアを開けていくしかないのよ!えいっ」
「待て待てマリーちゃん!そこ違うって!」
先走るマリーが全く関係ない部屋の扉を勢いよく開ける。
そこには「兵器」として改良された最新モデルの人工魔術生命体がズラリと並んで待機していた。
「げっ!」
ラズが声を漏らすと同時に最新型兵器が三人を視界に捉え、一斉に動き出す。
どうやら戦闘モードのようだ。
「マリーちゃん、ハズレを引くにしても酷くない!?」
「大丈夫!マリーちゃんがまとめてバッキバキにするわ!」
「マリー、ラズ、援護します!」
「助かるエミリオくん。おっし、殺りますか」
ラズがナイフを構える。
その横をマリーが素早く駆け抜け、誰よりも先に敵へ攻撃を仕掛けた。
「マリーちゃんが道をつくるの!先陣をぶった切っていくのよ!!」
「おーい、マリーちゃ~ん!後ろにいる研究員は殺しちゃダメだからな〜」
「わかったの!」
「ラズ、面倒な敵はまとめて僕が拘束します。こちらに誘導して下さい」
「ほーい」
広くはない室内で、複数の最新型兵器がマリーを追い詰め取り囲む。
絶体絶命のように思えるが、マリーは無表情で冷静に活路を見出してみせた。
「一つ!二つ!三つ!」
高いマリーの声が響き、心がない人工魔術生命体から血が飛び散る。
ナイフで致命傷を負わせた敵の数を叫びながら、マリーは次々と獲物を屠っていった。
そんなマリーの動きを目にし、研究機材のそばに固まっていた魔術研究員達が悲鳴のような声を上げる。
「あれは、旧殺戮型!?なんで研究所にいるんだ!?」
「暴走したのか!?殺戮型ってどうやって止めるんだよ!?」
「旧型兵器のデータを出せ!まだ残ってるはずだ!」


