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それからエミリオが庭に空間転移陣を描き、いざ敵地へ、となったのだが。
見送る側のリーシャが、キュッとエミリオの服を掴む。
「エミリオ、お願いだから、すぐ自爆しようとしないでね」
「……善処します」
「それ、必要があれば自爆しますって聞こえる」
「っ……わかりました。貴女を悲しませるようなことはしません。なるべく自爆はしないよう努力しますので、リーシャ……手を離してください」
これではリーシャまで連れて行ってしまう。
準備万端のラズとマリーをチラと見て、エミリオは困り顔。
「心配、なの……」
リーシャの弱々しい声が聞こえ、エミリオは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫ですよ」
チュッと音を立て、リーシャの額にキスをする。
「必ず戻るので、いい子で待っていてください」
「こ、子供扱い……!?」
「とんでもない。子供にこんなことはしませんよ」
今度は唇に口づけを。
一瞬のようなその触れ合いの後、エミリオは優しく囁いた。
「行ってきます」
服を掴むリーシャの手が緩み、エミリオがそっと離れていく。
「行ってらっしゃい……」
リーシャの見送りの声を耳にして、エミリオ達はその場を後にした。
(エミリオ、マリーちゃん、ラズ……。オーチェも……無事に戻ってきてね)
皆の無事を祈りながら家の中へと戻る。
するとリーシャは廊下で、リビングへ行こうとしている祖父と出くわした。
「おじいちゃん!」
「おお、リッちゃん。帰ってたんか」
「うん」
祖父のギーフェルは孫の顔を見るとニコニコしながら近寄った。
「大学はどうじゃ?友達はできたか?」
「大学は楽しいよ。友達もできた」
「そうか。そりゃあ良かった。オーチェが一緒なら大丈夫だとは思うが、アルブの町には色んな輩がいるから気をつけるんじゃぞ」


