自爆しないで旦那様!



***

 それからエミリオが庭に空間転移陣を描き、いざ敵地へ、となったのだが。

見送る側のリーシャが、キュッとエミリオの服を掴む。

「エミリオ、お願いだから、すぐ自爆しようとしないでね」

「……善処します」

「それ、必要があれば自爆しますって聞こえる」

「っ……わかりました。貴女を悲しませるようなことはしません。なるべく自爆はしないよう努力しますので、リーシャ……手を離してください」

これではリーシャまで連れて行ってしまう。

準備万端のラズとマリーをチラと見て、エミリオは困り顔。

「心配、なの……」

リーシャの弱々しい声が聞こえ、エミリオは安心させるように微笑んだ。

「大丈夫ですよ」

チュッと音を立て、リーシャの額にキスをする。

「必ず戻るので、いい子で待っていてください」

「こ、子供扱い……!?」

「とんでもない。子供にこんなことはしませんよ」

今度は唇に口づけを。

一瞬のようなその触れ合いの後、エミリオは優しく囁いた。

「行ってきます」

服を掴むリーシャの手が緩み、エミリオがそっと離れていく。

「行ってらっしゃい……」

リーシャの見送りの声を耳にして、エミリオ達はその場を後にした。

(エミリオ、マリーちゃん、ラズ……。オーチェも……無事に戻ってきてね)

皆の無事を祈りながら家の中へと戻る。

するとリーシャは廊下で、リビングへ行こうとしている祖父と出くわした。

「おじいちゃん!」

「おお、リッちゃん。帰ってたんか」

「うん」

祖父のギーフェルは孫の顔を見るとニコニコしながら近寄った。

「大学はどうじゃ?友達はできたか?」

「大学は楽しいよ。友達もできた」

「そうか。そりゃあ良かった。オーチェが一緒なら大丈夫だとは思うが、アルブの町には色んな輩がいるから気をつけるんじゃぞ」