(どうしよう……)
こういう時のために口語魔術学科では無言魔術というものも勉強するのだが、上級者向けな上、入学したばかりのリーシャはまだ習っていない。
(……うん、詰んだね)
冷静にそう思ったリーシャだった。
(とりあえず、私が犬になっちゃったことを誰かに伝えないと……)
こういう時は自分の学科のケトナ教授を頼ろう。
そう決めてリーシャが教授のいる部屋に向かっていた途中だった。
廊下でエミリオにバッタリ出くわしてしまった。
「ん?首輪がないですね。……野良犬、でしょうか」
「ワン!(違います!)」
「ダメですよ。大学内には許可されていない動物が入ることは禁じられています。それとも、誰かのペットですか?ペットも持ち込み禁止のはずですが」
「ワン!ワンワンッ!(私です!リーシャです!)」
「よしよし。随分と人懐っこいですね。……僕は次の時間、空きなんです。暇です。なのでよろしければ外へ一緒に行きませんか?」
言うが早いか、彼は小型犬のリーシャをひょいと抱き上げた。


