自爆しないで旦那様!



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 リーシャの実家は首都アルブよりも西にある、ラウジジュという小さな町だ。

そこはのどかな田舎町で、緑が多い。

リーシャは子供の頃、よく家の近くの森や湖で友達と遊んだものだった。

綺麗な花や食べられる草を探したり、木の実をたくさん集めたり、冬には雪遊びをしたりと、懐かしい日々を思い出す。

まだ実家を離れて一年も経っていないのに、なんだか遠い昔のことのようだとリーシャは感じた。

「ふぅー。エミリオくんが空間転移魔術使えてマジで助かったぜ。パッと一瞬だもんな〜。リッちゃんの実家までダラダラ移動してたら何時間かかるかわかりゃしない」

エミリオの魔術で故郷に瞬間移動したリーシャ達は、色とりどりの花が植えられた可愛い庭へあっという間に到着した。

エミリオの魔術は完璧だ。

見覚えがあり過ぎる庭に、ここが自分の実家だとリーシャはすぐわかった。

「リーシャ、ここで間違いありませんか?」

「うん。大丈夫。ありがとう、エミリオ」

「ここがリッちゃんの生まれたお家?お庭がとっても可愛いわ!」

「あれ?そういやマリーちゃん、ここに来んの初めてな感じ?」

「初めてよ!いつも健康診断はフェルフェルがマリーちゃんのお家に来てくれるから」

「僕も初めてです。僕とマリーはギーフェルに住んでいる場所を伝えていましたから、直接ここに来る必要性がなかったんです。住所不明の誰かとは違います」

「おっと。エミリオくんの言葉のナイフが俺の腹にグサッと入った」

(そう言えば、ラズの家って……)

リーシャは、石に形を変えて持ち運びしているラズの家を思い出した。

確かにあれではラズが移動する度に場所がコロコロ変わってしまう。

「ラズは定期的にうちに来てたってこと?その姿で?」

エリマキトカゲのラズなら見たことはあったが、チョコレート色の髪の青年なんて見た記憶がない。

リーシャが問えば、ラズは苦笑した。