自爆しないで旦那様!


ギーフェルという祖父の名前を出され、フェルフェルの正体がわかり、リーシャは納得した。

リーシャの祖父は魔術医だ。

リデア家のご先祖が造った人工魔術生命体の健康チェックくらいできるだろう。

だが、彼らが祖父と定期的に会っていたなんて、リーシャは知らない。

全て初耳だ。

「リーシャ、貴女が狙われているのは、人工魔術生命体を親に持つ唯一の子供だからです。ルイは守備型で、僕達の中で一番肉体が頑丈に造られています。ルイの特徴が貴女に受け継がれているなら、普通の人間より傷の治りが早かったりするかもしれません」

「そう、かな……?そんな感じ、しないけど」

「まあ、リッちゃんがわかんなくても、研究としてそういうデータを取りたい奴ってのはいるんだよ。例えば、リッちゃんにわざと怪我させて、その完治の仕方を観察するとか。ヤバイ薬飲ませてボロボロになったリッちゃんの回復力を記録するってな具合にな」

人体実験。

その言葉が頭に浮かび、リーシャはぞっとした。

「やけに具体的ですね。誰から聞いたんですか?」

エミリオがラズを睨む。

するとラズは事も無げにこう言った。

「企業秘密。あっ、でも安心しろよ?それ言ってた豚野郎は俺がキレイに始末しといたから」

「始末?依頼主ではなかったんですか?」

「依頼主だぜ?でも流石にクソ過ぎて殺しちゃった。俺は飼い主を選ぶ犬だからさ。ね、リッちゃん」

自称ペットのラズがニヤリと笑んでリーシャを見る。

リーシャはゾクリとした。

初めてラズに底知れない恐怖を覚える。

これが信用できないラズの裏の顔なのか。

「ラズ、そろそろ嬉しい情報とやらを聞かせてください」

「嬉しい情報はだな、オーチェくんがまだ生きてること。人工魔術生命体の最新型モデル兵器には心も自我もないから容赦なくぶっ壊せること。この二つくらいかな」

「少ないです」

「そう言うなって。悪いことの方が多いけど、勝算はある」

ラズは自信満々に言った。

「てなわけで、ピンチなオーチェくん奪還作戦!エミリオくん、マリーちゃん、そして俺。この三人でグレジウ要塞にカチコミな」

「カチコミ?マリーちゃんの知らない言葉よ?どういうことかしら?」

「殴り込み、という意味です」