自爆しないで旦那様!


リビングにある黒いソファーに腰掛ける。

初めて訪れたエミリオの家の中をゆっくり見る心の余裕など今のリーシャにはなく、エミリオとマリーもそろってラズへと顔を向けた。

「んじゃ、嬉しい情報とイヤ〜な情報、どっちから聞きたい?」

「ドキドキな方からがいいわ!」

「嫌な情報から、お願いします」

「うーん、俺はリッちゃんに聞いたんだけど、まあいっか。悪い情報その一は、オーチェくんが軍の研究所に捕まってて研究材料にされそうなこと。その二は、最新型モデルの兵器がオーチェくんを見張っててかなり救出が厳しいこと。その三は、研究者達の本命がやっぱりリッちゃんなこと」

ラズと目が合い、リーシャは詳しくない言葉を聞き返す。

「軍の研究所?」

「リッちゃん知らない?グレジウ要塞ってところ。そこはさ、軍の魔術師達が戦争に関する魔術開発に力を入れてる研究所なんだよね」

「五百年前、僕達はアルブの研究所で生まれましたが、後にグレジウ要塞に移されました。その研究所は僕達が解放されるまで寝起きしていた、言わば勝手知ったる場所です」

「チェるチェる、悪い魔術師に誘拐されちゃったの?また、あの暗くて狭い場所に閉じ込められてるの?」

「うん。ザックリ言えばそんな感じ。けど、軍の指示っていうより個人的な動きっぽいんだよね」

言いながら、ラズがポケットから紙を取り出した。

「俺の調べが正しければ、犯人はこいつ」

その紙に描かれているのは、ラズの言う「犯人」の顔。

どこにでもいるような眼鏡のおじさんが気難しげな表情でこちらを睨んでいた。

「バスティアン・キルヴジカ。軍の魔術研究員で、人工魔術生命体を使って兵器の研究をしてる」

「あら?どういうことなの?マリーちゃん、人工魔術生命体で兵器を生み出すことはもうしないって聞いたのよ?誰が言ってたかは忘れちゃったけど、言ってたことはちゃんと覚えてるわ!」

「確か、禁止にしたのはマーコル・バルケでしたよね?」

「そうそう。俺達を解放してくれたマーコルくん、人工魔術生命体で兵器造るの、スッゲー反対してたからな。けどさー、今の大魔術師ベッティルくんがまた許可しちゃったんだよねー。人工魔術生命体で兵器を造ってもいいって」

「それでこのバスティアンとかいう男が、自身の研究のためにリーシャとオーチェを狙っているんですか」