さて、のろのろと支度を終えたリーシャが朝食を食べていると、いつも通りエミリオが迎えに来てくれた。
ラズが玄関の扉を開け、明るくエミリオを出迎える。
「よっ!エミリオくん。ちょいと話があるからキッチンに来てくんない?リッちゃんもいるからさ」
「ラズ?朝から人間の姿は珍しいですね。……何かありました?」
察しが良いエミリオにラズはニヤリ顔。
家の中に入ってもらうと、ラズは真面目モードでオーチェのこととリーシャの状況を伝えた。
「てことで、マリーちゃんにはエミリオくんから説明よろしく」
「わかりました。いつも以上に警戒を強めます」
「俺が一緒にいられないからさ、マジで頼むよエミリオくん」
一緒にいられない、と耳にしたリーシャが不安げな瞳でラズを見る。
「ラズ、どこに行くの?」
問えば、彼は自信ありげにこう言った。
「そりゃあ、俺ってば、こういう時のための情報収集が専門だろ?てなわけで、得意分野は任せろ。リッちゃん達が帰ってきたら、オーチェくんについての嬉しい情報もイヤ〜な情報もまとめてぜーんぶ聞かせてあげる」
楽しみに待ってろよ、と言ってから、ラズは思い出したように続けた。
「あ、そうだ。リッちゃん。大学終わったらエミリオくんの家で俺を待ってるよーに。この家には戻るなよ?たぶんリッちゃんの家だってバレてるから、待ち伏せとかされてそう」
「待ち伏せ!?」
声を出して驚くリーシャ。
あまり怯えさせないよう、ラズはおどけた調子でエミリオの方を向いた。
「エミリオくんはリッちゃん襲うなよー。良い子で健全に待ってろよー」
「……それは、暗に襲えと言っているんですか?」
「違うっての!マジボケすんな!」
冗談で言ったはずが、真剣な表情で深読みしてくるエミリオに、こっちはこっちで心配になるラズだった。


