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翌朝、リーシャが目覚めると、珍しく青年の姿をしたラズがリーシャの机に寄り掛かって立っていた。
「おっ、朝だぜリッちゃん。おはよ」
起きたリーシャに気づき、難しい顔をしていたラズがニヤッと笑む。
「おはよう……ラズ、なんでエリマキトカゲじゃないの?」
「おいおいリッちゃん、反応逆じゃない?俺がエリマキトカゲの時に、なんでカッコいいお兄さんに戻ってくれないの?って尋ねるのが普通じゃない?未だに一回も言われたことないんだけど?」
「ラズはトカゲでいい」
「おっと。それだと俺、隠密トカゲ型爬虫類兵器に改名しないとだな」
このままだと意味もないお喋りが止まらなくなりそうなので、ラズは一度咳払いをした。
「ところでリッちゃん。オーチェくんのことなんだけど、さ」
「オーチェがどうかしたの?」
「まだ、帰ってないんだよね」
「え?」
聞かされたことが驚きで、リーシャはベッドから飛び起きると慌ててオーチェの部屋へ向かった。
「オーチェ!?」
部屋はしんとしており、誰もいない。
そのままリーシャは一階のリビングやキッチン、風呂場まで確認した。
朝っぱらから家の中をバタバタと駆け回る。
それ程広くないので、すぐに捜索は終わった。
オーチェは、どこにもいない。
「どうして……?オーチェはどこに行ったの?」
こんなこと本当に初めてで、リーシャは呆然となる。
いつでもリーシャのことを一番に考え、過保護なくらいそばにいるオーチェが、行き先も告げず夜に出たきり戻らないなんて前代未聞だ。
「ラズ、オーチェから何か聞いてない?」
振り返ってラズを見れば、彼はいつになく真剣な様子で口を開いた。
「リッちゃん、俺の予想が正しければ今かなりマズイ状況だから、素直に俺の言うこときいてくれよ?いいな?」


