自爆しないで旦那様!



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 イェーラーの事件があってからしばらく、リーシャとエミリオは健全なお付き合いをしつつ平穏に大学生活を送っていた。

そんな穏やかな日々に異変が起きたのは、とある日の夜のこと。

お風呂上がりのリーシャがキッチンでジュースを飲んでいた時、リーシャはオーチェが玄関へ向かうのを目撃した。

どうやら出て行くようだ。

「オーチェ?こんな時間にどこ行くの?」

普段、オーチェは夜に外出しない。

初めてのことに不思議に思い尋ねると、オーチェはいつも通りの様子でこう言った。

「ちょっとね。リーシャ、君は絶対に家から出ちゃダメだよ。早くベッドに入って眠るんだ。いいね?」

リーシャが頷くと、オーチェは静かに玄関から外へ。

リーシャは寝る支度を終えてから自室へ戻った。

「おっ、リッちゃん。あんま夜更かしすんなよ?さっさと寝ないと、リッちゃんの綺麗な肌が荒れちまうだろ?」

いくら出禁にしても当たり前の如く部屋に入ってくるラズが、エリマキトカゲの姿で開けっ放しのカーテンに跳びつく。

閉めろという合図だ。

窓のカーテンを閉めながら、リーシャはオーチェの行動が気になって独り言のように言葉をこぼした。

「……オーチェが、出掛けたんだけど」

「ん?それがどした?」

「なんか、珍しいなって」

「心配しなさんなって。俺じゃないんだから、オーチェくんは夜遊び楽しむタイプじゃないでしょ。間違っても酒とか女とか殺しとかじゃ……いや、殺しはありか。つーかそれ以外で殺戮型は動かないしな普通」

カーテンに掴まりぷらぷら揺れていたラズが、ピョンと机に着地する。

それを横目に、リーシャはナイフを握って暴れるオーチェを想像してしまった。

「オーチェ、まさか外で……」

「まあ、オーチェくんのことは気にすんな。リッちゃんは早く寝ちまえ。寝ないと俺がリッちゃんの耳元で子守唄うたっちゃうぞ?」

「それはやめて。ラズ、本当に音痴だから。笑っちゃって眠れなくなる」

「えー」

その夜、オーチェは帰って来なかった。