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浅い眠りから覚め、まだ暗い早朝にリーシャがベッドから起き上がる。
(エミリオ……もう、大丈夫かな……?)
考え始めると二度寝などできなくて、リーシャは薄暗い廊下へ出た。
そして一階へ。
暗いリビングをそっとうかがえば、ソファーで動く気配があり、リーシャは慌てて明かりをつけた。
「エミリオ!」
「っ……リー、シャ……?」
突然光を受けたエミリオが、眩しそうにしながらリーシャを見て目を丸くする。
彼はうなだれるような姿勢でソファーに座っていた。
どこからどう見ても、疑いようがなくエミリオだ。
頭から足の先まで、着ている服も昨日と同じように再生されている。
リーシャは嬉しくて、ホッとして、彼のそばに近寄った。
「リーシャ……?生きて、いたんですか?無事、なんですね……?」
「うん。私は大丈夫だよ」
「良かっ、た……」
リーシャがエミリオの隣に腰掛けると、彼は泣きそうな声で不安だった心を打ち明けた。
「僕は、貴女が殺されてしまったかと……!」
「外でのこと?確かに切りつけられそうになったけど、ラズが一緒だったから助かったよ」
「ラズ……そうですか。ラズが……」
晴れない表情でエミリオは目を閉じる。
「悔しいです。貴女を守る役目は、僕でありたかったのに……」
「エミリオも守ってくれたじゃない。呪いからも、イェーラーからも」
「……そうでしょうか。僕は貴女を、危険にさらしてばかりいます」
エミリオは自嘲するように顔を歪めた。
「呪いの時もですが、今回もそうです。貴女が出て行った後、僕は彼らを殺すため自爆しようと決めていました。貴女を二度も殺そうとした相手ですから、情けは無用でしょう。ですが、本当は、あんなすぐに自爆するつもりではなかったんです。まだ貴女が近くにいるだろうことはわかっていたので、もう少し時間をかせぐつもりでいました」


