自爆しないで旦那様!


「伏せろ!!」

ラズの声と同時に、大爆発が起こる。

辺りに爆音が響いた。

後ろに見える屋敷が物凄い音を立てて吹っ飛び、崩れ、炎に包まれる。

風が熱い。

「くっそ……エミリオくん、早すぎない?もうちょい逃げる時間ちょーだいっての」

文句を言いつつラズはリーシャを抱きかかえた。

そして再び走り出す。

ラズの腕の中でリーシャは地獄のような光景を目にし、呆然となった。

今までいた屋敷が激しく燃えている。

火の勢いも、煙も凄い。

あそこにはまだ、たくさんの人間がいたはずだ。

「な、に……?なにが、起こったの……?」

「自爆したんでしょ。エミリオくんが」

「自、爆……?エミリオ……エミリオはっ!?」

「落ち着きなって。エミリオくんはほっといても大丈夫だから」

「でも!!」

「ったく……わかった。もうちょい煙と火が落ち着いたらエミリオくんの回収な。けどここは危ないから、ひとまず家に戻るぞ。リッちゃんのこと心配してオーチェくんも探してそうだし」

もうすぐ日が落ちる。

ラズは暗くなりつつある空の下を休み無しに移動した。

今二人がいる場所はアルブの町の郊外らしく、周りにはあの燃えている屋敷以外、家屋は見当たらない。

リーシャの目に見慣れたアルブの町の灯りが見えてきたのは、闇が濃くなってきた頃だった。

「リーシャ!」

町に到着したばかりの二人に駆け寄ってくる人物が一人。

オーチェだ。

「無事だね?良かった」

ずっと走り回っていたのか、珍しくオーチェの息が荒い。

「オーチェ?どうして、ここに……」

「君の気配が突然消えたから、色々と探し回ってたんだよ。ごめんねリーシャ。怖かった?エミリオがそばにいると思って、少し油断してた僕の落ち度だ」

反省している眼差しでそう言ってから、オーチェはギロッとラズを睨んだ。