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「おはようございます、リーシャ。もう朝食の用意はできていますよ」
ベッドから起きてキッチンへ向かえば、食欲をそそる香り。
まだちょっぴり眠たいリーシャは、すっかり目覚めてテキパキと動いている夫にのんびりと挨拶を返した。
「おはよう……今日も早いね、エミリオ」
起きたらすでに旦那様であるエミリオが朝食の準備をしているのはいつものこと。
今朝のメニュー、焼きたてのパンとカボチャのスープは美味しそうだ。
しかし、リーシャには不満があった。
「ねえ、エミリオ」
「何でしょう」
ムスッとしているリーシャに近づき、寝起きの妻の可愛い寝癖を手でそっと直してやりながらエミリオが首を傾げる。
「こうして、食事の支度をしてくれるのはありがたいんだけど……。朝、目が覚めたとき隣にエミリオがいないのは……寂しい」
結婚してまだ半年も経っていない二人。
どれだけ遅く寝ても、いつもエミリオがリーシャよりも先に起きて色々と生活の準備を始めてしまう。
早起きは良いことだが、やっぱりちょっと寂しいと思ってしまうリーシャだった。
妻の「寂しい」を耳にして、エミリオがハッとする。
「そうだったんですか……。気がつかず、すみません。僕は起きてすぐ目に入る貴女の可愛い寝顔に癒やされているので、自分だけ満足して貴女のことを考えていませんでした」
申し訳なさそうに言ってから、エミリオはクソ真面目に確認をとる。
「つまり、貴女が目覚めるまで僕もベッドの中にいればいいんですね?」
「まあ……うん。そうしてくれると、嬉しい……かな」
自分で言っておいて、大胆なお願いだったなと恥ずかしくなるリーシャ。
だんだん声が小さくなる。


