「ここは…?」
わたしが案内した部屋に入った大空くん
そういう疑問も無理はない
お昼だってのに部屋の中は薄暗く埃っぽい
初夏の陽気以上に部屋の空気は温かく感じる
朝から人の出入りがない証拠だろう
「ここは美術の準備室… わたし美術部だから鍵借りれるの」
ここなら余程のことがないかぎり誰もわざわざお昼休みにはこなかった
「なるほどな、あぁいう胸像とかもデッサン用ってことか… 何体もあるとちょっと薄気味悪いけどな」
物珍しそうに辺りを見回しながらつぶやく大空くん
わたしは大空くんと机を挟んでちょうど向かい側の席に腰を掛ける
「で、話なんだけど… わたしもなんだか大空くんのこと知ってるような気がしたの… でも思い出せなかった 思い出そうとするとモヤモヤした霧が頭の中にかかるように感じるの… もしかして、そのこととなんか関係あるのか…知りたい」
わたしの話しを聞きながらゆっくりと席に座る大空くん…
「碧…、やっぱおまえあの時の碧なんだな…」
大空くんがわたしを見る目が優しくなった
人の目の表情がこんなにわかりやすく変わるところをわたしは初めて見た…
「碧もおれのこと『青』って呼んでくれてた、正確には『青ちゃん』だったけどな」
青ちゃん… あおちゃん… 確かにどこか懐かしく覚えのある響きだった
大空くんはわたしがなにか思い出せるんじゃないかと少しの間だまってわたしを見ていた
「ううん、まだ無理… ちゃんと話して?」
ふっ、大空くんからため息が漏れるのをわたしは聞き逃さなかった
なにかを期待していたのだろう…



