痺れる愛のピースサイン


「おかえり。」
「あー、疲れた。今日の飯、何?」
「ロールキャベツ。」
「えぇ〜、ロールキャベツ?もっとガッツリしたもん食いたかったなぁ。」

健人はそう言うと、スーツの上着をソファーの背もたれに投げかけ、ネクタイを外してから第二ボタンまでを開けると、大きな溜息をつきながらソファーに腰を落とした。

「俺、そんな腹減ってないから、飯いらねーわ。」

そう言って、テレビのリモコンに手を伸ばし、テレビをつける健人。

わたしはその言葉に料理を作る手を止めると、心の中で呟いた。

どうせ、あの子と何か食べてきたんでしょ?と。

「それなら、、、ちょっと話したいことがあるんだけど。」

わたしはそう言うと、手を洗ってからエプロンを外し、簡単に畳んだエプロンを握り締めながら、健人のそばへ歩み寄った。

「話したいこと?何?」

テレビの方を向いたままそういう健人。

わたしは健人の隣に腰を掛けると、エプロンをギュッと握り締めてから一つ深い溜息をつき「今日、どこ行ってたの?」と訊いてみた。

すると健人は、一瞬だが表情を強張らせ、それから何も無かったかのように「はっ?普通に仕事行ってたけど。てか、テレビ見てんだから話し掛けるなよ。」と答えた。

健人は分かりやすい。

自分に非があると、すぐに話しを逸らそうとする。

それから一瞬強張らせたあの表情、、、
浮気は確定だった。