痺れる愛のピースサイン


「急にどうしたんだよ。」

颯生にそう訊かれ、答えるかどうか迷った。

だって、、、さっき「幸せ」だって嘘をついたばかりだから。

「、、、無理に言う必要はないけど、泣いてる和花をこのままほっとけないよ。」

やっぱり、颯生は優しいなぁ。
あの頃と何も変わらないなぁ。

わたしの少しの異変や変化に気付き、心配してくれたり、褒めてくれたり、一緒に喜んでくれたり、一緒に悲しんでくれたり、、、

颯生とは、たくさんの想いを分かち合ってきていた。

しかし、今交際している健人は違う。

自分が最優先でわたしの気持ちは二の次、三の次。

わたしの異変や変化にも気付かず、落ち込んで元気がない日があっても慰めるどころか「何、機嫌悪いの?こっちまで気分悪くなる。」と不機嫌になるのだ。

わたしは昔から自分に自信がない。

だから、以前の職場で知り合った健人に告白をされた時、"わたしを好きでいてくれる人なんて、この先現れないかもしれない"からという理由でその告白を受け入れたのだった。

でも、付き合ってはみたものの、健人からの愛情を感じることなどなかった。

最初の告白の時に「好き」と言われたきりで、言葉でも行動でも愛情表現を示してくれたことはなく、男女の身体の関係も付き合い始めの三ヵ月間だけで、それからの一年半はレスなのだ。

そんな健人がわたしと付き合っている理由、、、
それは"大人しく自分の言うことを聞いてくれるから"。

以前に電話で誰かと会話をしていて、そう言っているのを聞いてしまったことがあったのだった。

しかし、それでもわたしは健人に何も言えなかった。

本当は「酷い!」「わたしを何だと思ってるの?!」って、言いたかった。

でも、そんなことを言える勇気もないわたしは、心の中で悲しむことしか出来なかったのだ。