「病院までバス一本で通勤出来るならいいな。」
「うん。わたしは免許持ってないからね。」
「彼氏は?」
「車通勤してるよ、」
と言ってすぐのことだ。
今日仕事のはずの恋人の健人が反対車線側の歩道をわたしよりも年下であろう若い女性と手を繋ぎながら歩いているのが見えたのだ。
健人とその女性の横を通り過ぎ、見えたのは一瞬だったが、あれは確実に健人だ。
どうゆうこと?
仕事じゃないの?
仕事だって嘘ついて、浮気してたってこと?
嘘つき、、、
いや、わたしは健人を"嘘つき"だなんて言えないか。
わたしだって、颯生に嘘をついたんだから、、、
きっと嘘をついたのが自分に返ってきたんだよね。
すると、そんなわたしの異変に気付いた颯生が「和花?どうした?」と訊いてきた。
わたしは「何でもないよ。」と答えながら、助手席側の窓の外に目を向けたのだが、声が震えてしまい、明らかに"何でもない"わけがなかった。
そんなわたしの様子に、颯生は帰路の途中にある広い公園の駐車場に入り車を停めると、「何でもなくないだろ。和花、こっち向いて?」と言う。
わたしは颯生の言葉に俯きながら、ゆっくりと颯生の方に顔を向けた。
「ほら、、、何でもないなら、涙なんて流さないだろ?」
そう、わたしは堪えることが出来ず、さっきの光景から涙を流していたのだ。



