痺れる愛のピースサイン


わたしはしばらく颯生の腕の中で泣かせてもらった。

颯生はあーだこーだ何も言わずに、わたしをソファーまで誘導してくれ、座らせると涙と鼻水まみれの顔を拭くためにティッシュを差し出してくれて、眼鏡を外すと、それを受け取ってテーブルの上に置いてくれた。

受付とはいえ、産婦人科で働いているわたしがまだ望んではいなかった、無理矢理な行為からで妊娠をしてしまうなんて、、、
しかも、元彼の子どもを、、、

でも、、、"中絶"という文字は、わたしの頭の中に浮かんではこなかった。

だって、父親が誰であれ、わたしの子どもに違いはないし、血の繋がりがある唯一の家族なんだから。

自分を産んだことで母親を亡くし、父親とも関係が上手くいっていないわたしにとって、唯一の小さな家族になる。

わたしは、、、涙が少し落ち着くと、一つ溜息をつき、颯生に「ごめんね、、、」と謝った。

颯生はわたしの言葉を聞き、不思議そうに「なんで謝るの?」と言った。

「だって、、、まだ付き合い始めたばかりなのに、、、こんな形になってしまって、、、。あり得ないよね、彼女が、元彼の子を妊娠してるだなんて、、、本当にごめんなさい。」
「でも、それは、和花は悪くないだろ。その、クソな元彼が、、、あぁー、腹立つ。これからにでも、そいつを殴りに行きたいくらいだよ。だから、和花が謝る必要なんて無い。」
「、、、今からにでも、フッてくれていいから。短い間だったけど、、、こんな彼女でごめん。わたしは、」

と、わたしが別れ話をしようとすると、颯生は「え、ちょっと待って。」とわたしの話しを遮った。

「俺、和花と別れたいなんて思ってないし、別れを告げるつもりもないよ?」

颯生の言葉にわたしは驚き、「え、何で、、、」と呟いた。