颯生が産科医を選んだ理由が、わたしだっただなんて、、、
そんなこと思いもよらなかった。
わたしもつい耐えきれずに涙を流してしまい、そんなわたしを見た宙先生は「大丈夫?」とわたしにハンカチを差し出した。
「あ、ありがとうございます。」
わたしは宙先生からハンカチをお借りすると涙を拭き、「洗濯してからお返ししますね。」と言った。
「えぇ〜、いいよ。そんなわざわざ洗濯しなくても。」
「でも、ファンデーションとかついて汚れてしまったので。」
「それでもいいよ。大崎さんの涙と香りが染み付いたハンカチなんて、貴重だからね。」
そう言って、宙先生はわたしの手から汚れてしまったハンカチを引き抜いた。
「えぇ!宙先生それ、どうゆう意味ですか?もしかして、宙先生って変態?」
ベテラン助産師の駒板さんがそう言うと、宙先生は「え、医師なんてみんな変態ばっかりだよ?」と平然と言った。
その宙先生の声に助産師や看護士たちは悲鳴を上げ、誰かが「産科医がそれを言うのは、、、いくら副院長でも、ちょっと、、、」と言った。
「それに、宙先生は変態かもしれませんが、玄葉先生を宙先生と一緒にしないでください!」
駒板さんがそう言うと、宙先生は「酷いなぁ。」と言いながら、余裕な笑みを浮かべていた。
周りの助産師や看護士たちは駒板さんの言葉に賛同しており、その間わたしは颯生の方を向き、また颯生もわたしの方を向いて、顔を見合わせ微笑んだ。
「俺、頑張るから。」
颯生がわたしに向けてそう誓い、わたしは涙を滲ませながら「うん。」と頷いたのだった。
わたしは颯生らしい、産科医を選んだ理由に、更に颯生への想いが膨らみ、ついそれを言葉に出してしまいそうになったが、グッとそれを呑み込んだ。
颯生とわたしの関係は、周りの人たちにバレてはいけない。
しかし、宙先生だけは何かを感じ取っているような様子があったことをわたしはその表情から読み取っていたのだった。



