「高校時代に付き合っていた彼女が居たんですけど、その彼女のお母さんが彼女を出産して亡くなってるんですよ。」
颯生のその言葉を聞き、ハッとするわたし。
そう、、、わたしの母は、わたしを出産したせいで亡くなっているのだ。
「突然の意識消失と呼吸不全があったようなので、話しを聞いた限りですが、心肺虚脱型羊水塞栓だったのではないかと僕は予測しました。心肺虚脱型羊水塞栓になってしまうと、心肺停止になるまでに時間が短いので、母体と胎児の両方の命を守ることは非常に厳しいと思うんですが、」
颯生がそう話している間、宙先生とわたしだけではなく、歓迎会に参加していた全員が颯生の話に耳を傾けていた。
「僕は、、、綺麗事だと言われてしまうかもしれませんが、どんな状況であろうと、母体も胎児も、、、両方の命を守れる医師になりたいと思い、産科を選びました。」
颯生の話を聞いた宙先生は「なるほど。」と何度か頷いたあと、「確かに綺麗事だね。」と言った。
「ですよね。でも、それによって母体より胎児を優先されて産まれてきた子どもは、必ず自分を責めますよね?自分のせいでお母さんが亡くなってしまった、、、自分は、産まれてきて良かったのか?って。」
わたしは自分の履いているスカートをギュッと握り締め、颯生の話を聞き、必死に涙を゙堪えながら、テーブルの上で汗をかくグラスを見つめていた。
颯生が今話した言葉、気持ちは、、、わたし自身が颯生に話したい言葉だったからだ。
「僕は、そんな子どもを無くしたい。自分は望まれて産まれてきて良かったんだと思えて、そして、トツキトオカ我が子を大切にお腹の中で育ててきたお母さんが無事に我が子をこの手で抱ける、、、そんな奇跡で神秘的な瞬間しかないお産を、僕は目指す為に産科医を選びました。」
颯生は真剣な表情でハッキリとそう言った。
そんな颯生の話に助産師や看護士たち、クラークの人たちは涙していて、泣いていなかったのは"そんなの綺麗事だ"とでも言いたそうな表情をしている宙先生だけだった。



