それから、研修医の颯生は毎日忙しそうで、院内で会うことがあっても話す時間など無く、初日の休憩時間に話せたのが奇跡のようだった。
しかし、帰宅する場所は同じなので、帰宅してから一緒にご飯を食べる時や寝る前なんかにその日あったことなどを話す生活になり、些細なそんなことが嬉しかったりした。
そして、颯生が研修医として来てから十日後に颯生の歓迎会が行われたのだが、いつもなら五〜六人程度しか集まらない飲み会が、颯生の歓迎会ともなると軽く十人は越えていて、夜勤や当直じゃない院内の関係者はほとんどが集まっていた。
いつも飲み会で利用する小料理屋を貸切、颯生はど真ん中に座らせられ、当然颯生の周りは女性の助産師や看護士たちが囲んで歓迎会は始まった。
「玄葉先生は彼女いるんですか?」
「どんな女性がタイプなの?」
「今、何歳なんですか?」
「彼女にするから、医療関係者はありですか?」
颯生への質問が飛び交う歓迎会の中、わたしは端の方で一人でノンアルのグレフルサワーを飲んでいた。
颯生がこの状態になることは想定内ではあったが、それにしても返答もする隙さえないくらいの質問攻めで、颯生はその対応に大変そうだった。
「大崎さん、さっきから玄葉くんの方ばっかり見てるけど、やっぱり大崎さんも玄葉くん気になるんだ?」
そう話し掛けてきたのは、わたしの左隣に座っているアイ·ウィメンズホスピタルの副院長である相川宙(あいかわ ひろ)先生だ。
宙先生は、現在の院長である相川滋院長の息子さんで、次期院長になる方だ。
「あ、いえ。玄葉先生、、、質問攻めで大変だなって。」
そう答えてはみたが、実際のところは少し妬いてしまっている自分もいた。



