そしてわたしは、颯生が沸かしてくれた湯船に浸かった。
あったかい、、、
勿論、乳白色がかった良い香りのお湯の温かさもあるが、それよりもわざわざわたしの為だけにこのお湯を沸かしてくれた颯生の気持ちの温かさの方が心と身体に沁み渡っていった。
そういえば、まだ付き合っていた当時、あれは付き合い始めて三ヵ月目の時だっただろうか。
わたしが周りの女子から"玄葉くんの彼女"だからという理由で陰口を言われている事に気付き、落ち込んでいる時、わたしは落ち込んでいるのを隠しているつもりだったのだが、颯生にはすぐに気付かれてしまい、一緒に下校している時に「和花、何かあっただろ?」と言われたのだ。
「えっ、別に何もないよ。」
当時から眼鏡をかけていたわたしは、下がってきた眼鏡を人差し指でクッと上に上げながらそう言った。
「何で隠すんだよ。俺には言えないこと?」
「、、、そうじゃないけど。」
「俺は、どんなことでも言って欲しい。悲しいことも、楽しいことも、腹立つことも、嬉しいことも、何でも共有したい。何でも和花と分け合いたい。」
そう言って、颯生はわたしの手を握り締めてくれた。
「なぁ、これ知ってる?」
そう言いながら、颯生は親指と人差し指をクロスさせてわたしに見せた。
「これハートらしいよ。でも、こんなの小さ過ぎるよな。」
颯生はそう言いながら、自分で作った小さなハートを眺め、それから「あっ!」と何か思い付いたように言い、それからわたしに向けて裏ピースをして見せたのだ。
「見て!こっちの方がでっかいハートっぽくない?」
そう言って嬉しそうに微笑む颯生が愛おしくて、その日から颯生は「これ、和花への"愛してる"のサインな!」と言って、家までわたしを送り届けると必ず「また明日な!」と裏ピースをするようになったのだ。
「懐かしいなぁ。」
そんなことを呟きながら、わたしはお風呂の中で自分で裏ピースをしてみたのだった。



