そして、インターホンを押して間もなく、702号室のドアが勢い良く開いた。
「和花!」
中から慌てた様子で出てきたのは、わたしが会いたかった颯生だった。
颯生はわたしの姿を見て「何でこんなびしょ濡れなんだよ!ほら、早く入って!」とわたしが持っていたキャリーケースを持ってくれ、わたしをすぐに中へ招き入れてくれた。
「ほら、これで拭いて!今、風呂沸かすから!」
そう言って、颯生はわたしに大判バスタオルを頭から被せ、バタバタと家中を駆け回っていた。
「いいよ、わざわざお風呂沸かさなくても。」
わたしはそう言ったが、お風呂を沸かす音が聞こえてきたあとに姿を現した颯生は、医師らしくわたしの脈を測ったりしながら「こんなに身体が冷えてるんだから、温まらないと駄目だよ。」とわたしを叱ってくれた。
そんな颯生の姿を見て、わたしの頬が自然と綻ぶ。
なぜだろう。
颯生を前にしたら、急に身体の力が抜け、わたしはその場に座り込んでしまった。
すると、颯生は慌ててわたしを抱えようとしたが、今の関係性でどこまで触れて良いのか戸惑ったのか、座り込んだわたしの動向を確認し、「とりあえず大丈夫そうだから、お風呂が沸くまで毛布に包まってて。」と、わたしの髪の毛をクシャクシャっと大判バスタオルで拭くと、寝室らしき場所から持ってきてくれた毛布でわたしを包んでくれた。
「、、、ありがとう。」
わたしがお礼を言うと、颯生は「当然のことをしただけです!」と言って、ニカッとわたしに微笑んで見せたのだった。



