痺れる愛のピースサイン


「ねぇ、ちゃんと話し聞いてよ。」
「うるせーなぁ、テレビ見てるって言ってんだろ!」

いつもはしつこくしないわたしに苛つき始める健人は、腕を組み、貧乏揺すりを始めた。

それでもわたしは話しをやめなかった。

だって、今日は勇気を出すって決めたんだから。
颯生から、優しさと勇気をもらったんだから。

「今日、、、女の子と一緒に歩いてるところ、見たの。」

わたしがそう言うと、健人はしばらく黙ったあと大きな溜息をつき、リモコンでテレビを消すと、乱暴にリモコンをテーブルに放り投げた。

「あ、そう。」
「、、、否定しないんだ。」
「見られたんなら仕方ないだろ。」
「じゃあ、、、浮気、認めるんだ。」

わたしがそう言うと、健人はフッと馬鹿にしたように笑い「お前が悪いんだぞ。」と言った。

"お前"かぁ、、、

今思えば、まともに名前で呼ばれたことなんて無かったなぁ。

「お前がつまらない女だから。」
「、、、つまらない女ってことは、自分でも自覚してるよ。」
「それなら、俺を責めるな。」
「でも、それなら、、、何で別れないの?わたしと別れて、あの子と付き合えばいいじゃない。」

すると、初めて言い返してきたわたしに苛つきが増したのか、健人は"あー、もういいわ"とでも言いたそうな表情でわたしの方を向くと、わたしの頬に平手打ちをしてきた。

静かなリビングにバシンと響く、わたしの頬を叩く音。

暴力を受けたのは初めてではないが、今回の平手打ちは今までの中で一番苛つきの強さがこもっていた。