そして、米原主任と約束していたサッカーの試合があるという土曜日。
米原主任はわざわざ、わたしの自宅まで車で迎えに来てくれた。
「すいません、わざわざ迎えにきていただいて。」
「いや、誘ったのはこっちの方だから。それに試合は相手側の中学校のグラウンドでやるから、行くとなるとなかなか大変だし。」
そう言う米原主任の今日の格好は、サッカーのコーチとして行くのだから当たり前だが、スポーティなスタイルだった。
いつもスーツ姿しか見たことのない米原主任の別の一面が見れて、凄く新鮮な気持ちになった。
それから、わたしの自宅を出て30分もしない内に試合会場の中学校に辿り着き、わたしは米原主任の車の助手席から降りると、中学校を見上げ、母校でもないのに懐かしい気持ちになっていた。
「どうかした?」
中学校を見上げるわたしに米原主任が訊く。
わたしは「全然母校とかじゃないんですけど、何か懐かしくて。」と答えた。
「中学校に来る機会なんてないもんな。あ、キャンプ用の折りたたみ椅子持って来たから、これ使って。」
「え!わざわざ持って来てくれたんですか?!」
「ずっと立って見てるのは、なかなかキツイからね。さっ、行こう。」
そう言って、キャンプ用の折りたたみ椅子を肩に掛け、米原主任はグラウンドの方へ歩き出した。
そんな米原主任について行くわたし。
わたし、本当に来て良かったのかなぁ?
今更そんな不安も抱きつつ、いつもはパンプスだが、久しぶりに履いたスニーカーでグラウンドの土を踏みしめながら歩いた。



