「ところで、夏梅さん。最近、米原くんと仲良いんだって?」
オセロをしながら、金子社長はわたしに尋ねてきた。
「社長にまで、そんな話が耳に入っているんですね。」
「そりゃあ、相手があの米原くんだからね。"クールイケメン"とか言われてるんだろ?」
金子社長はそう言いながら、ハハハッと笑った。
「まぁ、確かに米原くんは背も高いし、スタイルも良いし、男から見てもかっこいいと思うよ。」
「そうなんですか?」
「そりゃね、あんな容姿端麗なら、認めざるを得ないよ。」
金子社長がそう言っている間にわたしがオセロで角を取ると、金子社長は「ありゃ!角取られた!」と頭を押さえた。
「実は先日、偶然にも婚活パーティーで米原主任と会ったんですよ。」
「あれ。二人とも婚活してるのかい!君たちなら婚活なんてしなくても、モテるだろ!」
「いえ、そうじゃないんです。わたしは母に、米原主任はお姉さんに勝手に予約を入れられてて、行く羽目になっただけで、、、」
わたしがそう言うと、金子社長は「なるほどな。」と言いながら、次に置く場所探していた。
「でも、米原主任ってクールで話し掛けづらいオーラがありましたけど、話してみると印象が変わりました。」
「そうだね。彼は、クールに見えて実は内に熱いものを秘めているからね。」
そう言って、金子社長は角を取ると「おっ!やったぞぉ!」と喜んでいた。
「社長、今日はやりますねぇ。」
「ははっ!でも、あの米原くんがそんなに話すとは、珍しいよ。きっと夏梅さんとは話しやすいんじゃないかな?」
「そうなんでしょうか?」
「まぁ、本心は米原くんにしか分からないが、夏梅さんと話してる時の米原くんを見掛けた時は驚いたよ。柔らかい表情をしていたからね。」
社長の言葉に気を取られ、この日のわたしは調子が悪く、オセロは金子社長に全敗してしまった。
米原主任の柔らかい表情、、、
あの表情は、やっぱり貴重な表情だったんだ。



